春を告げるさくらの開花

ここから本文です。

朝晩は肌寒い日もありますが、3月に入り暖かな日が多くなり春が感じられるようになってきました。春の季節を感じられるものはいろいろありますが、代表的なものといえば「さくら」が挙げられるのではないでしょうか。
今回は、さくらの開花などを含む生物季節観測について解説します。(この記事は、2024年3月13日に掲載しています。

生物季節観測の情報

全国の気象台や測候所では、うめやさくらが開花した日や、かえでやいちょうが紅(黄)葉した日などを統一した方法や基準により観測しています。これを「生物季節観測」といい、観測された結果は、季節の遅れ・進みや気候の違い、変化など、総合的な気象状況の推移を把握することに用いられるほか、新聞やテレビなどの報道にも利用されています。

生物季節観測は、各地の観測結果を互いに比較したり、同一地点の観測結果を長期間にわたって比較するなどのため、気象台等の敷地内に1本の観測する対象の木(標本木)を定めていますが、気象台等の敷地内で標本木が選定できない場合は、付近の公園等にある植物を標本木に選定し観測を行っています。

令和3年1月以前は、多くの植物の開花や動物の初鳴き等を観測していましたが、気象台等の周辺の生物の生態環境が変化し観測対象動物を見つけることが難しくなったことなどから、令和3年1月から、一年を通じた季節変化やその遅れ・進みを全国的に把握することに適した代表的な6種目9現象の観測を継続し、その他の観測は廃止されました。

観測対象種目と現象(生物季節観測指針(気象庁)より)
植物1

 

さくらの開花と満開

生物季節観測のなかでもよく知られているのが、さくらの開花や満開ではないでしょうか。さくらの観測は、観測結果が比較できる一般的なソメイヨシノを観測しますが、気候条件の違い等により生物の生育が難しい北海道の一部ではエゾヤマザクラ、南西諸島ではヒカンザクラを代替として観測しています。

多くの植物はその結実の過程として花が開きます。これが開花ですが、生物季節観測の種目ごとの開花日の基準には若干の違いがあります。さくらについては、標本木で5、6輪以上の花が開いた状態となった最初の日を開花日としています。また、咲き揃ったときの約80%以上が咲いた状態(同時に咲いている状態である必要はない)となった最初の日を満開日としています。

さくらは、前年の夏頃に翌春咲く花のもととなる花芽(生長すれば花となる芽)を形成し、晩秋から初冬にかけて寒い冬を越すために休眠状態に入ります。そして、冬の低温にある一定期間さらされると休眠状態から目覚め(「休眠打破」と呼ばれる。)、春先の気温の上昇とともに生長し開花に至ります。

このようにさくらの開花には「冬の寒さ」と「春の暖かさ」が必要となりますが、地球温暖化の影響で気温が高くなりすぎると、さくらの生育自体に影響がでる可能性があります。なかには、今後さらに温暖化が進むと、さくらが開花せず、満開のさくらが見られなくなる地域がでてくると予測する研究者もいます。

今年の冬は、冬型の気圧配置が長続きせず、寒気の流れ込みが弱かったことや2月を中心に南から暖かい空気が流れ込んだ時期があったことから、全国的に暖冬傾向で経過しました。民間気象会社などが発表している今年のさくらの開花予想では、休眠打破の時期は平年より遅くなった地域もあると考えられていますが、休眠打破後の気温が平年より高めと予想され休眠打破の遅れを取り戻すため、全国的に平年並みか平年より早い開花となる予想となっています。

さくらの開花日の等期日線図(気象庁ホームページより)
生物2

お問い合わせ先

危機管理室総務担当