神戸市防災気象官(気象防災アドバイザー)がお届けする「気象に関するトピックス」4回目のテーマは、「台風と災害」です。(この記事は、2021年8月13日に掲載しています。)
台風が最も発生する8月に入りました。台風は、広範囲の大雨や集中豪雨、暴風、高潮などを伴うもので、毎年のように接近・通過し、各地で甚大な被害をもたらしています。台風による災害から身を守るためには、台風に関する正しい知識が不可欠です。
そのようなことから、今後数回にわたり、台風の基本的な内容や台風に伴う災害を掲載していきます。
台風
熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、このうち北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速が17.2m/s以上のものを「台風」と呼びます。
台風は、暖かい海面から供給された水蒸気が凝結して雲粒になるときに放出される熱をエネルギーとして発達しますので、日本近海の海水温が高くなる時期には、勢力を維持または発達しながら接近・通過することが多くなります。
台風の大きさと強さ
気象庁は、台風のおおよその勢力を示す目安として、下表のように風速(10分間平均)をもとに台風の「大きさ」と「強さ」 を表現します。
「大きさ」は強風域(風速15m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径で、 「強さ」は最大風速で区分しています。さらに、風速25m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲を「暴風域」と呼びます。
台風の大きさと強さ
(気象庁「大きさの階級分け」「強さの階級分け」を加工して作成)
台風に関する情報の中では台風の大きさと強さを組み合わせて、「大型で強い台風」のように呼びます。例えば、「大型で強い台風」と発表している場合、その台風は、強風域の半径が500kmから800 kmで、中心付近の最大風速は33m/sから43m/sで暴風域を伴っていることを表します。ただし、強風域の半径が500km未満の場合や最大風速が33m/s未満の場合には、大きさや強さは表現しません。
台風の発生、接近、上陸、経路
30年間(1991年から2020年まで)の平均では、年間で約25個の台風が発生し、約12個の台風が日本から300 km以内に接近し、約3個が日本に上陸しています。
月別の台風発生・接近・上陸数の平年値(1991~2020年の30年平均)
(気象庁ホームページより)
台風は、春先は低緯度で発生し、西に進んでフィリピン方面に向かいますが、夏になると発生する緯度が高くなり、下図のように太平洋高気圧のまわりを回って日本に向かって北上する台風が多くなります。
8月は発生数では年間で一番多い月ですが、台風を流す上空の風がまだ弱いために台風は不安定な経路をとることが多く、9月以降になると南海上から放物線を描くように日本付近を通るようになります。室戸台風、伊勢湾台風など過去に日本に大きな災害をもたらした台風の多くは9月にこの経路をとっています。
台風の寿命(台風の発生から熱帯低気圧または温帯低気圧に変わるまでの期間)は、30年間(1991年から2020年まで)の平均で5.2日ですが、中には1986(昭和61)年台風第14号の19.25日という長寿記録もあります。長寿台風は夏に多く、不規則な経路をとる傾向があります。
台風の月別主要経路
(気象庁「台風の月別の主な経路」を加工して作成)