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エルニーニョ現象とラニーニャ現象

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2022年6月28日、近畿地方の梅雨明けが発表されましたが、これは記録が残る1951年以降最も早い梅雨明けとなっています。

この早い梅雨明けの要因の一つとして、昨年秋から続いている「ラニーニャ現象」が挙げられています。今回は、日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられている「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」について解説いたします。(この記事は、2022年8月1日に掲載しています。)

エルニーニョ現象・ラニーニャ現象とは

通常、太平洋の熱帯域では、貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、海面付近の暖かい海水が西に流され、太平洋西部のインドネシア近海では暖かい海水が蓄積されます。

一方、太平洋東部の南米沖では、西に流された海水を補うため、海底から冷たい海水が湧き上がってきます。

このため、海面水温は太平洋赤道域の西部で高く、東部で低くなっており、海面水温の高い西部では、海面からの蒸発が盛んで、大気中に大量の水蒸気が供給され、上空で積乱雲が盛んに発生します。

しかし、何らかの要因で貿易風が平常時より弱まると、西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まってきます。

このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも高くなります。これを「エルニーニョ現象」と呼び、発生時は積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移ります。(下図エルニーニョ現象時参照)

逆に、何らかの要因で貿易風が平常時より強まると、西部に暖かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなります。

このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも低くなります。これを「ラニーニャ現象」と呼び、発生時はインドネシア近海の海上では積乱雲がいっそう盛んに発生します。(下図ラニーニャ現象時参照)

気象庁では、エルニーニョ監視海域を定め、監視海域の30年間の各月の平均値を基準値として、基準値と5か月移動平均値との差が6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、−0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象と定義しています。
 
エルニーニョ/ラニーニャ現象に伴う太平洋熱帯域の大気と海洋の変動

(気象庁ホームページより)

エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の日本への影響

エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、地球上のさまざまな地域に異常気象を引き起こすと言われており、日本の気候にも大きく影響を与えています。

エルニーニョ現象による日本の天候への影響

エルニーニョ現象が発生すると、西太平洋熱帯域の海面水温が低下し、積乱雲の活動が活発な場所が東にずれてしまいます。

このため、日本付近に張り出す太平洋高気圧も東にずれ、夏季は太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱くなり、気温が低く、日照時間が少なくなる傾向があります。冬季は西高東低の気圧配置が弱まり、気温が高くなる傾向があります。

ラニーニャ現象による日本の天候への影響

ラニーニャ現象が発生すると、西太平洋熱帯域の海面水温が上昇し、フィリピンやインドネシア近海で積乱雲の活動が活発となります。

このため、日本付近では、夏季は太平洋高気圧が北に張り出しやすくなり、気温が高くなる傾向があり、冬季は西高東低の気圧配置が強まり、気温が低くなる傾向があります。
 
エルニーニョ現象、ラニーニャ現象が日本の天候に影響を及ぼすメカニズム

(気象庁ホームページより)

また、エルニーニョ現象、ラニーニャ現象と台風の関係について、現象発生期間とそれ以外の期間で統計的に有意な差が見られるかどうか気象庁が調査した結果、以下の傾向が見られるとしています。

エルニーニョ現象発生時

  • エルニーニョ現象の発生期間の7月から9月までは、台風の発生数が平常時より少ない傾向がある。
  • 台風の発生位置が、平常時に比べて南東にずれる傾向がある(夏は南に、秋は南東にずれる傾向がある)。
  • 夏、最も発達した時の台風の中心気圧が平常時よりも低い傾向がある。
  • 秋、台風の発生から消滅までの寿命が長くなる傾向がある。

ラニーニャ現象発生時

  • 台風の発生位置が、平常時に比べて西にずれる傾向がある(夏は北に、秋は西にずれる傾向がある)。
  • 秋、台風の発生から消滅までの寿命が短くなる傾向がある。

気象庁では、エルニーニョ現象など熱帯域の海洋変動を監視するとともに、それらの実況と見通しに関する情報を「エルニーニョ監視速報」として毎月1回(10日頃に)発表しています。

2022年7月11日に気象庁から発表された「エルニーニョ監視速報」によると、今後の見通しとして、夏の間に平常の状態になる可能性もある(40%)が、秋の終わりまでラニーニャ現象が続く可能性の方がより高い(60%)としています。

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危機管理室総務担当