神戸市防災気象官(気象防災アドバイザー)がお届けする「気象に関するトピックス」6回目は、前回に引き続き「台風と災害」です。(この記事は、2021年9月29日に掲載しています。)
前回は、台風による風についてお伝えしましたが、今回は、台風による雨について具体的に説明します。
台風に伴う雨
台風は、強い風とともに大雨を伴います。台風は積乱雲(強い上昇気流によって鉛直方向に著しく発達した雲)が集まったもので、広い範囲に長時間にわたって雨を降らせます。
台風は、積乱雲が眼の周りを壁のように取り巻いており、そこでは猛烈な暴風雨となっています。この眼の壁のすぐ外は濃密な積乱雲が占めており、激しい雨が連続的に降っています(内側降雨帯)。
さらに、外側の200kmから600kmのところには、帯状の降雨帯(外側降雨帯)があり、断続的に激しい雨が降ったり、ときには竜巻が発生することもあります。
また、中心から400kmから1,000 km離れたところでは、時には先駆降雨帯が停滞して大雨を降らせることがあります。これらの降雨帯は下の図のように台風の周りに渦を巻くように存在しています。
台風に伴う雨の特性(気象庁ホームページより)
また、台風の接近時に梅雨前線や秋雨前線が日本付近に停滞していると、台風から流れ込む暖かく湿った空気が前線の活動を活発化させ、大雨となることがあります。 雨による大きな被害をもたらした台風の多くは、この前線の影響が加わっています。
雨による災害
台風がもたらす雨は、大量の雨が短期間(数時間から数日)のうちに広い範囲に降るため、河川が増水したり堤防が決壊したりして水害(浸水や洪水)が起こることがあります。
近年は治水事業が進み、大河川の氾濫は少なくはなっていますが、宅地等の開発が進んだ都市部では、川の急激な増水が生じたり、道路や住宅の浸水、道路のアンダーパス等の地下空間の水没といった被害も発生しています。
また、雨により山や崖(がけ)が崩れたり、土石流の発生などの土砂災害も発生します。土砂災害は、すさまじい破壊力をもつ土砂が一瞬にして多くの人命や住宅などの財産を奪ってしまう恐ろしい災害です。
土砂災害には、山腹や川底の石や土砂が一気に下流へと押し流される土石流や、山の斜面や自然の急傾斜の崖、人工的な造成による斜面が突然崩れ落ちる崖崩れなどがあります。
最近は、雨による土砂災害の犠牲者が自然災害による死者数(地震・津波を除く。)の中で大きな割合を占めるようになってきました。
近年の宅地開発は都市郊外の丘陵地や急傾斜地を利用することが多く、宅地造成により新たな崖が形成されることで土砂災害による被害が大きくなっています。
さらには、雨で増水した川や田んぼを見に行って流されてしまったり、浸水した道路で側溝の境界が見えにくいために転落したりする事故も発生しています。
雨の強さと降り方
降水量は、降った雨や雪、ひょうなどがどこにも流れ去らずにそのまま溜まった場合の水の深さで、mm(ミリメートル)で表します。
例えば、「1時間で100mmの降水量」は、降った雨がそのままたまった場合、1時間で雨が水深10cmとなるということです。雨の強さに応じた人などへの影響や具体的なイメージは下表のとおりです。
雨の強さと降り方(気象庁ホームページより)