春に多くなる黄砂

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2022年から2023年にかけての冬の気温は、12月下旬以降、平年を下回る傾向が続き、東・西日本では寒冬となりました。しかし、3月も半ばを過ぎ日増しに気温も上昇し春らしい気候となってきました。

春になると、見通しが悪くなり、時には空が黄褐色に煙り、車や建物に黄色い砂がうっすらと積もることがあります。これは「黄砂」と呼ばれ、春が来るたびにおなじみの風景ですが、黄砂による健康被害も危惧されていることから、今回は「黄砂」について説明します。(この記事は、2022年3月29日に掲載しています。)

黄砂現象とは

黄砂現象とは、東アジアの砂漠域(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯から強風により吹き上げられた多量の砂じん(砂やちり)が、上空の風によって運ばれ、浮遊しつつ降下する現象で、日本では春に観測されることが多い現象です。

日本における黄砂の影響としては、視程(水平方向の見通し)の悪化により航空機の離着陸等に影響が生じることや、洗濯物や車の汚れなど日常生活に影響を及ぼしますが、目、鼻、皮膚などのアレルギー症状との関連が報告されるなど、人体への影響についても危惧されるようになってきました。

黄砂現象は従来、自然現象であると理解されてきましたが、近年ではその頻度と被害が甚大化しており、急速に広がりつつある過放牧や農地転換による土地の劣化等との関連性も指摘されています。

そのため、黄砂は単なる自然現象から、森林減少、土地の劣化、砂漠化といった人為的影響による側面も持った環境問題として認識が高まっています。

黄砂解説図
(気象庁ホームページより)
黄砂現象発生の有無や黄砂の飛来量は、発生域の強風の程度に加えて、地表面の状態(植生、積雪の有無、土壌水分量、地表面の土壌粒径など)や上空の風の状態によって大きく左右されます。

黄砂粒子はいったん大気中に舞い上がると、比較的大きな粒子(粒径が10マイクロメートル以上)は重力によって速やかに落下しますが、小さな粒子(粒径が数マイクロメートル以下)は上空の風によって遠くまで運ばれます。

日本国内11地点の気象台で、黄砂の観測が行われており、職員が目視により大気中に黄砂粒子が浮遊していると判断した場合に「黄砂」として記録しています。

黄砂の観測は、1967年(昭和42年)から2020年(令和2年)まで全国11地点で観測が続けられています。下表は、1991年(平成3年)から2020年(令和2年)まで30年間に11地点で黄砂現象が観測された日数の平均値です。

月別黄砂観測日数平年値(気象庁ホームページより)

黄砂は、黄砂発生源が乾燥していて上空の風が日本へ向いて吹いているなどの条件が揃えば、春でなくても飛来する可能性があります。

春に黄砂がよく飛来するのは、発生源の地面状態の違いが大きく影響していると考えられています。夏から秋は植物が地面を覆っており、冬は土壌の凍結や積雪により、黄砂の発生が抑えられます。

これに対し、春先は植物が充分に育っておらず、土壌の凍結や積雪もないため、黄砂の発生する可能性が高くなります。

黄砂に関する情報とその利用

視程の悪化による交通への支障や日常生活に広い範囲で影響を及ぼすような黄砂が観測された場合や、向こう24時間先までに影響を及ぼすような黄砂が予想された場合には、気象庁から発表される「黄砂に関する全般気象情報」や神戸地方気象台から発表される「黄砂に関する気象情報」などで黄砂の状況や今後の見通しについて知ることができます。
  ここでは、気象庁ホームページで提供されている「黄砂解析予測図」についてご紹介します。

黄砂解析予測図は、地表付近の黄砂濃度や大気中の黄砂の総量の分布を黄砂の数値モデルで計算したもので、前日の3時間ごとの解析結果、当日から1日先まで3時間ごと、2日先から3日先まで6時間ごとの予測を見ることができます。

黄砂解析予測図には、地表付近の黄砂の濃度の分布図と大気中の黄砂の総量の分布図の2種類があり、これらはプルダウンメニューで切り替えることができます。

また、地図の範囲を切り替えることで、黄砂の発生域を含むアジア域における分布について知ることもできます。さらに、表示時刻もボタン操作やプルダウンメニューで切り替えることができます。この黄砂解析予測図の更新は、毎日午前6時頃に行われます。
 
黄砂解析予測図(日本域)の例(気象庁ホームページより)
(左が地表付近の黄砂の濃度の分布図、右が大気中の黄砂の総量の分布図)

地表付近の黄砂濃度の分布図は、黄砂分布領域を地表面から高さ約1000メートルまでの間の黄砂濃度に応じて色に濃淡を付けて表示したもので、視程(水平方向の見通し)の悪化や、洗濯物や車の汚れなどの黄砂の影響を考える際の情報として利用することができます。

大気中の黄砂総量の黄砂解析図は、地表面から高さ約55キロメートルまでの間の1平方メートルあたりに含まれる黄砂総量に応じて色に濃淡を付けて表示したもので、大気中に黄砂が浮遊していることによって感じる空のにごり具合に対応する情報として利用することができます。

また、黄砂の状況を広くお知らせするために、環境省と気象庁が共同で情報を集めて提供する「黄砂情報提供ホームページ」からも確認できます。

お問い合わせ先

危機管理室総務担当