台風と災害(2)

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神戸市防災気象官(気象防災アドバイザー)がお届けする「気象に関するトピックス」5回目のテーマは、前回に引き続き「台風と災害」です。(この記事は、2021年8月27日に掲載しています。)

前回は、台風の統計資料や基本的な内容をお伝えしました。今回からは、台風の接近・通過に伴って同時多発的に発生する様々な災害について具体的に掲載していきます。

台風に伴う風

台風は巨大な空気の渦巻きになっており、地上付近では上空から見て中心に向かって反時計回りに強い風が吹き込んでいます。そのため、進行方向に向かって右の半円では、台風自身の風と台風を移動させる周りの風が同じ方向に吹くため風が強くなります。逆に左の半円では、台風自身の風が逆になるので、右の半円に比べると風速がいくぶん小さくなります。
 

 台風に伴う風の特性①


 
次の図は、過去の台風の地上での風速分布を右半円と左半円に分けて示した図です。進行方向に向かって右の半円の方が、風が強いことが分かります。

この図で分かるように、中心(気圧の最も低い所)付近は「眼」と呼ばれ、比較的風の弱い領域になっています。しかし、その周辺は最も風の強い領域となっています。
 
台風に伴う風の特性②
台風7

また、台風が接近して来る場合、進路によって風向きの変化が異なります。風向きの変化を知りたい場所の西側または北側を台風の中心が通過する場合の変化は、「東→南→西」と時計回りに風向きが変化します。逆に、知りたい場所の東側や南側を台風の中心が通過する場合は「東→北→西」と反時計回りに変化します。

周りに建物などがあると、必ずしも風向きがこのようにはっきりと変化するとは限りませんが、風向きの変化は台風に備える際の参考になります。

台風の風は陸上の地形の影響を大きく受け、入り江や海峡、岬、谷筋、山の尾根などでは風が強く吹きます。また、建物があるとビル風と呼ばれる強風や風の乱れが発生します。道路上では橋の上やトンネルの出口で強風にあおられるなど、局地的に風が強くなることもあります。 

暴風による災害

平均風速15m/sから20m/s(時速換算54km/hから72km/h)の風が吹くと、歩行者が転倒したり、高速道路での車の運転に支障が出始め、更に強くなると建物の損壊、農作物の被害、交通障害など社会に甚大な被害をもたらします。

また、風で飛ばされてきたもので電線が切れて停電したり、最大風速が40m/sを超えると、電柱が倒れたりすることがあります。さらに、台風の周辺では、暖かい空気が流れ込み大気の状態が不安定となり、活発な積乱雲が発生して竜巻等の激しい突風を伴うこともあります。

台風が日本海に進んだ場合には、台風に向かって南よりの風が山を越えて日本海側に吹き下りる際に、気温が高く乾燥した風が山の斜面を吹き下りるフェーン現象が発生し空気が乾燥するため、火災が発生した場合には延焼しやすくなったりします。

さらには、強い風が海上から陸地に向かって吹くときに運ばれる塩分によって、植物が枯れたり電線などに付着して停電事故が発生したりすることもあります。

2018年9月4日14時頃に神戸市付近に上陸した台風第21号では、台風の中心の東側に位置した大阪府などで、猛烈な暴風が吹き、タンカーが関西国際空港連絡橋に衝突したほか、車の横転や倒木、屋根の破損などの大きな被害が発生しました。

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