借地借家

最終更新日:2024年8月13日

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この解説は、2019年9月、兵庫県弁護士会の監修を受け作成したものです。

兵庫県弁護士会(外部リンク)

相談が多いテーマの一般的な質問とそれへの回答の一例を示したものです。具体的な事情等によっては、この限りではありません。

家賃・地代・保証人

建物の修繕・増改築・立退き

賃貸借契約書

借地権

定期借地借家制度

 敷金、保証金、権利金(礼金)とは、どのようなものか。

(解説)

名称 性質 返還の要否 備考
敷金

「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。」(改正民法第622条の2)

  • 延滞賃料などに充当
  • 敷引特約
保証金 預託する契約条項等によるが、次のような性質があるものとされる。 性質により異なる

敷金より高額が通例

「償却」名目で控除する場合、一定額一定割合は権利金

①敷金の性質を有するもの
②権利金の性質を有するもの
③建設協力金の性質を有するもの
④貸金の性質を有するもの
権利金 賃貸借契約に際し、定期的に支払われる賃料以外に、入居時に一括して支払われる対価。
「営業ないし営業上の利益の対価(造作、のれん、得意先など)」「賃料の一部の前払」などの性質を有するものがある。「礼金」と呼ばれる場合もある。
性質により異なる 借地借家法上の明文の規定ではない。賃貸人と賃借人との合意によって、契約時に授受がなされる。

補足

ただし、賃借人から賃貸人に対し一定の金員の交付があった場合に、1:その金員が、敷金、保証金、権利金(礼金)のいずれに該当するのか、2:その金員のうち、どの部分が敷金で、どの部分が権利金(礼金)に該当するのか、等の問題については、契約書の文言のみから決定されるものではなく(契約書に「敷金」との記載があるから、法的に「敷金」と認定されるわけではなく)、契約書のその他の条項、賃貸借契約に至る経緯等を勘酌して決定されるものであり、具体的事例ごとに個別に検討する必要があります。平成29年5月に成立した改正民法第622条の2が「いかなる名目によるかを問わず」と規定しているのも、このような意味です。したがって、上記表は、あくまで一般的な例を示したものですので、ご注意ください。

 保証金(敷金)と同額の保証金(敷金)引きが特約で定まっていたら、返還を求めることはできないか。

(解説)
賃貸借契約のなかで、特約を設けることは、強行法規に反しないものであれば、契約自由の原則から認められます。

しかし、判例等においては、賃借人に特別の負担を課す特約については、次のような一定の要件を課しています。

  • (1)契約条件の性格上、特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなど、客観的かつ合理的理由が存在すること
  • (2)賃借人が特約によって、通常の原状回復義務を越えた修理等の義務を負うことについて認識していること
  • (3)賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

などが挙げられています。

賃貸人が消費者である場合、保証金(敷金)引きの金額が、通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、高額に過ぎると評価すべきものである場合は、賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど、特段の事情のない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法第10条により無効となる可能性があるので、返還を求めることができるケースもありうるでしょう。

 トイレなどの不具合を家主が修理しようとしないので退去したが、保証金(敷金)は全額返還してもらえるか。

(解説)
家主(賃貸人)には、修繕義務が定められており、トイレなどの設備は、特約がなければ、家主が修理義務を負うことになります(民法第606条第1項)。
賃借人は、家主がその義務を怠ったことで退去した場合、敷引等の特約がない限り、保証金(敷金)の全額について、返還を求めることができます。

 地代・家賃の算定はどのようにして行うのか。

(解説)
地代・家賃の決め方については、法律で定められているわけではありません。
地代の場合、通常、地主が近隣の地代や利用目的などを参考にして決定し、借り手となる人に提示するわけで、借り手が判断し、土地を借りるかどうか決めることになります。

家賃も同様ですが、継続家賃の計算方法としては、

  • (1)従来の家賃に、その後の経済変動率を乗じて値上げ額を求める方法
  • (2)建物と地代相当分に期待利回りを乗じ、維持管理費などの費用を加算した額と、従来の家賃との差額を出し、そのうち賃借人が負担するのが妥当な金額を値上げする方法
  • (3)近隣にある複数の借家の家賃と比較して、建物と敷地の種類や経済的価値、各借家の特有の事情を考慮して補正を行い、家賃を比較して値上げ額を求める方法

などがあります。なお、実際には、これらの中の複数の方法で計算して、妥当なものを決めることが多いようです。

適正な地代・家賃の算定には、専門的知識が必要ですので、不動産鑑定士などの専門家に相談するとよいでしょう。

(公社)兵庫県不動産鑑定士協会
神戸市中央区下山手通3-12-1トア山手プラザ807号室
078-325-1023

 地代・家賃の値上げを請求できるのはどんな場合か。

(解説)
地代・家賃の値上げについては、地(家)主と借地(家)人との話合いで自由に決めることが原則です。いくら話合っても合意が成立しなければ、一定の要件が備わっていれば、地(家)主の一方的な意思表示だけで地代・家賃の値上げを請求することができます(借地借家法第11条第1項、第32条第1項、旧借地法第12条第1項、旧借家法第7条第1項)。
一定の要件とは、1:契約期間中に土地(若しくは建物)に対する公租公課の増加、2:土地(若しくは建物)の価格の高騰その他の経済事情の変動、3:付近類似の土地(若しくは建物)の地代等(借賃)と比較して不相当となったこと、が挙げられます。ただし、契約上、一定期間、地代あるいは家賃を値上げしないという特約がないことが必要です。
なお、賃借人が、この値上げに不服な場合は、裁判で値上げが認められるまで賃借人が相当と考える地代あるいは家賃を支払えばよいとされています(借地借家法第11条第2項、第32条第2項、旧借地法第12条第2項、旧借家法第7条第2項)。

 地代・家賃を増減するには、どんな手続が必要か。

(解説)
契約当初は適当と思っていた地代・家賃も、その後の経済状況の変化によって不相当となることがあります。借地借家法は、地代・家賃について、地(家)主には増額請求権を賃借人には減額請求権を認めています(借地借家法第11条第1項、第32条第1項、旧借地法第12条第1項、旧借家法第7条第1項)。
値上げ・値下げについては、当事者間で協議するのが一般的ですが、地(家)主に増額要件がそろっている場合、増額の意思表示をし、それが賃借人に到達したときに値上げの効力が生じます。意思表示の内容を文書で明確にして通知するのが望ましいと言えます。
また、賃借人からも減額請求できますが、やはり文書で減額の理由の合理性を地(家)主に示し、値下げを通知するとよいでしょう。
合意が成立しない場合、地代または家賃の増減請求について訴えをしようとする者は、まず、調停の申立てをしなければなりません(民事調停法第24条の2)。

 契約の更新ごとに一定比率の家賃の値上げを定めることはできるか。

(解説)
値上げは、不相当に低額となった家賃を適正な家賃にするためのものであれば、一定期間ごとに一定比率の値上げをすることができます。そして、これを特約として定めた場合は、原則として賃借人はこの特約に拘束されることになります。
この特約は、更新後の家賃を定めるものとなりますから、賃借人がこの特約に従わないときは、賃貸借契約を解除されることがあります。
なお、特約で定めた一定比率の値上げが、経済事情などの変化に伴い著しく不相当となったときは、特約自体が無効となる場合があります。

 滞納地代・家賃を支払ってもらうには、どのようにすればよいか。

(解説)
賃借人が、地代・家賃を滞納している場合は、地(家)主として、まず、「何か月分いくらの滞納額があるので、いつまでに支払ってもらいたい」という催告をすることになります。
催告は、内容証明郵便にして配達証明付にすることを同時に頼んでおくのが無難です。
借地・借家契約を結ぶときに、あらかじめ契約書を公正証書にしておき、「地代・家賃を支払わないときは、地(家)主から強制執行を受けても異議がない旨、認諾した」という条項を入れておきます。
こうしておくと、滞納した地代・家賃がある場合は、裁判所を通じて賃借人の財産に対して強制執行を行って滞納金を取り立てることが可能です。(ただし、裁判例の傾向としては、特に明記のない限り、公正証書における執行認諾文言による執行力は、更新前の契約にのみ及び、更新後の契約に対しては及ばないと判断されている(神戸地裁昭和31年7月31日判決、東京地裁平成8年1月31日判決等)ことに注意が必要です。)
そうでない場合は、法的手続きを行う必要がありますが、手続には、1:支払督促があります。支払督促を簡易裁判所に申出ますと、相手方が支払督促を受取って2週間以内に異議を述べないと仮執行宣言が付されます。この仮執行宣言付支払督促にも相手方が異議を申立てない場合は、確定した判決と同様の効力を持ち、強制執行が可能となります。なお、相手方が異議を申し立てた場合は、通常の訴訟手続に移行します。2:通常の訴訟手続は、裁判所で裁判官が当事者双方の言い分を聞いたうえで和解や判決をします。

 地主・家主が一方的に地代・家賃の値上げを言ってきたが、どうすればよいか。

(解説)
地代・家賃の値上げについて当事者間に協議が整わないときは、増額を正当とする裁判が確定するまでは、借主は、相当と認める額の賃料を支払うことをもって足りるとしています(借地借家法第11条第2項、第32条第2項、旧借地法第12条第2項、旧借家法第7条第2項)。
家主が従来の家賃の受領を拒否したときは、法務局(供託所)に弁済すべき家賃を預ける(供託する)ことにより、債務不履行を免れることができます(民法第494条)。

 借家の家主が死亡したら、家賃の支払はどうすればいいのか。

(解説)
家主が死亡した場合、相続人が承継することになりますが、相続人が特定できないため、誰に家賃を支払えばよいか分らないことがあります。
このように債権者(家主)を覚知することが出来ないと認められる場合は、相続人が確定するまでの間、法務局(供託所)に家賃を預ける(供託する)ことにより、支払ったことと同じ法的効果が得られることになります(民法第494条)。

 借地・借家の賃貸契約での連帯保証人は、どこまで責任を負うのか。

(解説)
連帯保証人の責任の範囲は、賃貸借契約書に定められた保証条項の内容によって決まります。
通常は、賃貸借契約から生ずる賃借人の一切の債務を保証することになります。具体的には、賃料支払債務のほか、特約がない限り、賃料不払いによる損害賠償債務や賃借人が賃借物を損壊させた場合の損害賠償債務などがあります。また、賃貸借契約が解除されたときの賃借人の原状回復義務や明渡しを遅滞した場合の損害金の支払いについても責任を負うこととされています。ただし、個人根保証について極度額の設定が義務付けられたため(改正民法第465条の2)、契約締結時に極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めなければならないことになりました。極度額が定められていない場合、保証契約は無効となりますので、連帯保証人は責任を負いません(令和2年4月1日以降の契約に適用されますが、それより前でも極度額を定めた契約とすることが望ましいでしょう。)。
また、連帯保証人の責任は、保証期間を限定する特約があるなど、特段の事情がない限り、賃貸借契約が更新された場合でも、原則として、継続するものと解されています。
なお、連帯保証人は、普通の保証人と違って、賃貸人から賃借人への請求なしに、直接、請求された場合でも応じる義務があります。

 賃借人が行方不明の場合、保証人が賃貸借契約を解除をできるか。

(解説)
保証人が賃借人の代わりに無断で賃貸借契約を解除することは、認められません。
賃借人が行方不明で、賃料不払いが、通常、契約解除が認められる程度に至ったときは、賃貸人は、契約を解除すべきであって、契約を解除し、明渡しの強制執行をしないで契約を継続したときは、保証義務を負わないとの考えに立って、保証人は、賃貸人に対し、賃貸人からの契約解除をするよう申込むとよいでしょう。

 借家契約の保証人を辞めたいが、どのようにすればよいか。

(解説)
保証契約は、賃貸人と保証人との間で結んだ契約ですので、保証人が一方的に保証契約を解除することはできません。
但し、保証契約後、相当の期間が経過し、賃借人がしばしば賃料支払を怠り、かつ、将来においても支払えるとの見込みがないにもかかわらず、賃貸人が賃貸借契約の解除等の措置をとらないような場合は、賃貸人に告知することによって解約が認められるケースもあります。
従って、保証人を辞めたい場合は、賃貸人に話をして他の人を保証人にしてもらうとよいでしょう。

 家財や身のまわり品等を置いたまま借主が行方不明になったが、どのようにすればよいか。

(解説)
特別な事情がない限り、勝手に部屋(建物)の明渡しを貸主自らしたり、残して置いている物を売却したり、廃棄処分することは、認められません。後で、借主から損害賠償を請求されたり、刑事上の責任を求められる恐れがあります。
従って、このような場合は、契約解除の通知をして、その後、明渡等を求める訴訟を提起する必要があります。借主の所在が不明の場合、解除通知や訴状の郵送先は判りませんが、このような場合には、公示送達という手続をすることができます。
そして、明渡しや滞納賃料の支払いを命ずる判決を得た上で、裁判所の手で部屋(建物)の明渡しを実現したり、残置物を競売に付すなどの強制執行をしてもらう手続をとります。
その結果、滞納賃料の支払いを受けたり、競落人に残置物を運び出して処分してもらうことになります。場合によっては、貸主が自ら競落人となり処分することも考えたらよいでしょう。
なお、自力救済は、それが社会通念上、是認でき、違法ではない場合は、認められ、より違法とならないようにするため、残置物を別の場所に保管する方法もありますが、適法と評価されるのは限定的ですので、特別な事情のない限り、法的手続きによる処理をすべきと考えます。

 建物の修繕は、家主が費用負担をするのか。

(解説)
建物賃貸借契約は、家主が借主に建物を使用・収益させ、これに対し借主が賃料を支払う契約です(民法第601条)。このため、家主は、建物の使用・収益に必要な修繕を行う義務を負うことになります(民法第606条第1項)。家主が修繕義務を履行しない場合には、債務不履行の一般原則に従って損害賠償の請求(民法第415条)や契約解除の可能性も生ずることになります。また、借主は家主の修繕義務不履行が続く間、使用・収益に支障がある程度に応じて、賃料が減額される可能性も生じることになります(民法第611条第1項)。さらには、借主が家主に代って修理費を支払ったようなときには、家主に対し、直ちにその費用の請求もできます(民法第608条第1項)。

なお、次のような場合には、家主が修繕義務を負わなくてもよい場合が生じます。

  • (1)借主は家屋使用に当っては、善管注意義務が課されますので、もし故意過失に基づき家屋を破壊した場合には、借主の方に損害賠償として修繕費用負担義務が生じます(民法第400条、第415条)。
  • (2)建物の構成要素である屋根、壁、柱、土台などの損傷は、それによって使用・収益に支障をきたすことになるのが通常でしょうが、構成要素外の畳、襖などについては、家賃の額、固定資産の額、建物の状態その他契約諸条件及び慣習ないし社会通念でもって、家主の修繕義務の範囲が具体的に判断されることとなります。
  • (3)家主、借主どちらに修繕義務を負わせるかについて特約があるときは、その特約によることになります。しかし、この特約ですべての修繕は、借主が負担するとなっていても、借主の負担する範囲は、小修繕ないし通常生ずべき修繕の範囲に限られ、天災等予想外のひどい破損は、家主の負担となるのが一般的でしょう。
  • (4)家屋の老朽、天災等のひどい損傷により、物理的に修理が不可能である場合、経済的にも新築に等しい程の出費を要するなどの場合には、家主は修繕義務を免れ、修繕を拒絶することができます。

 借地人から増改築の許可を求められたが、拒否できるか。

(解説)
建物所有の目的で土地を賃借した者は、建物の種類、用途等についての契約の定めを守る限り、原則として、建物所有の目的の範囲内で借地を自由に使用することができます。
しかし、実際には、このような借地人の自由を制限するため、無断増改築禁止の特約を付けられる場合が多くあります。
この禁止特約も有効と解されていますので、もし借地人が無断で増改築した場合には契約違反となりますが、解約事由までになるか否かについては、判例は、その増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、地主に著しい影響を及ぼさないため、地主に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない場合には地主は借地契約を解除できない旨、判示しています。
このような借地上の建物増改築をめぐる紛争を事前に防止し、また、適正な承諾料を払っての増改築等を容易にするため、増改築許可の裁判制度が設けられています(借地借家法第17条第2項)。
この増改築許可の裁判は、増改築する前に申立てすることが必要ですが、裁判所は、この裁判をするに当って、土地の通常の利用上相当とされる増改築であること、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮し、その上で当事者の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当な処分をすることができることになっています。
なお、借地借家法は、上記増改築許可の裁判制度のほか、木造家屋を鉄筋コンクリート造りに建て替えるなど借地条件の変更について、借地条件変更許可の裁判制度(借地借家法第17条第1項)や借地契約更新後の建物再築許可の裁判制度も設けています(借地借家法第18条)。

 借家を退去したら修理費を請求されたが、どこまで原状回復義務(修繕費用の負担)があるのか。

(解説)
借主は、建物を善管注意をもって保存するとともに、返還時には、原状に復する義務があります(民法第400条、第621条、第622条による第599条第1項第2項の準用)。このことから借家人の故意過失に基づく損傷や勝手に取りはずして減価させたものには、借家人は修繕に要する通常の費用を負担する義務があります。
借家を明渡す場合に、よく問題となるのは、自然損耗による損傷です。通常の使い方をして年月の経過で相応の痛みをしたものについては、弁償の必要はありません。契約書に原状回復を求める条項があっても、故意過失、通常でない使用をしたため発生した損害の回復について規定したものと解すべきです。
具体的には、家具の置き跡は自然損耗とされることが多いでしょうが、湿気によるカビなどになると判断が難しい場合もあります。自然損耗に当たるかについては、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)をホームページ上で公開していますので、これを参考にするとよいでしょう。
敷金返還時のトラブルを起こさないためには、入居時、退去時に家主等の立合いを求めることや、証拠となる写真の撮影をしておくことも必要です。
また、建物に家主の承諾を得ず別のものを取付けた場合には、それが家主にとって不都合の場合には、借家人の費用で取りはずすことになります。また、取りはずしが不可能の場合には、減価分を弁償しなければなりません。逆に、家主にとって好都合で価値が高まっていると認められる場合には、有益費(改善費用)償還請求権が認められることになります(民法第608条第2項、第196条第2項)。
家主の承諾を得て畳や建具などの造作を取付けた場合には、価値が高まっていない場合にも取りはずしたり弁償したりする必要はありません。家主に取って好都合で価値が高まっていれば造作買取請求権が認められることになります(借地借家法第33条)。

 借主から造作の買取を請求されたが、どうすればよいか。

(解説)
借家契約が終了するとき、借主は家主に造作を買取って欲しいと請求することができます(借家法第5条、借地借家法第33条)。家主は、これに対して代金を支払わなければなりません。
この買取り請求権には、1:建物に付加された畳、建具その他の造作であること2:家主の同意を得て付加したか又は家主から買受けた造作であること3:賃貸借が終了したことの3つの要件が備わっていなければなりません。このような要件が具備されている場合には、家主は借主から造作を買い取る義務が生じることになります。

なお、具体的な適用に当っては次の事項にも配慮が必要です。

  • (1)造作について、裁判所は、建物に付加された物件で借主の所有に属し、かつ、建物の使用に客観的に便宜を与えるものをいい、借主がその建物を特殊な目的に使用するために特に付加した設備のようなものは、含まないと判示しています。
  • (2)借家法のもとでは、家主は、同意を与えるが、賃貸借終了後に買取らないとの条件を付することは出来きませんでしたが、借地借家法施行後(平成4年8月1日以降)には、家主は同意した造作を買取らない旨の特約を付することも有効となります。
  • (3)また、買取りを請求できるのは、賃貸借終了の場合ですが、借主が賃料不払いや用途違反等の理由で解除された場合には、造作買取請求はできないものとされています。
  • (4)契約期間中に家主が変更になった場合、造作を買取らなければならない家主は、賃貸借終了時の家主となります。
  • (5)買取る際の値段は時価ですが、この価格は障子、畳などを取りはずした価格ではなく、建物に付加されたままの状態で存する評価額です。

 土地や家の明渡しは、どういう場合に請求できるか。

(解説)
借地権設定者(地主等)や家主は、次の場合に契約を解除し、明渡しを求めるこができます。

  • (1)賃貸期間が満了時期に達しており、契約更新を拒絶する正当事由がある
  • (2)地代や家賃の滞納がある
  • (3)契約違反で無断転貸や無断増改築をしている

なお、(1)正当事由(借地借家法第6条、第28条)の有無は、貸主と借主の双方の一切の事情を比較考慮してなされますが、立退料の提供が正当事由の補完要素となる裁判例が多くあります。
また、(2)や(3)に基づき、契約を解除し、明渡しを求めるためには、(2)や(3)により信頼関係が破壊されたと認められる事情が存する等、一定の事由が必要ですので、解除等が認められるかどうかは、ケースバイケースとなります。

 立退きをしてもらうにはどのようにすればよいか。

(解説)
貸主が契約を終了させるためには、口頭で通告してもよいですが、できれば文書で終了の事由、例えば、期間の満了、自己使用等の正当事由、賃料滞納などの契約違反事由等を書いた通知(できれば配達証明付内容証明郵便で)を送付するのがよいでしょう。
当事者間で合意できなければ、調停や裁判の手続をとることになります。

 家主から立退きを言われているが、立退料はもらえるのか。また、立退料の相場はどれぐらいか。

(解説)
家主から正当事由なく解約を言われたときは、借主はこれを拒否できますが、双方の任意の話合いや調停の場で立退料の支払いをもって円満に解決することが多いです。判決でもいわゆる立退料のような金銭給付と同時に立退きを認める例も多くあります。
立退料の相場は、ケースバイケースですが、借地(借家)権価格や移転費用、営業補償等の諸事情を勘案して決定されるのが一般的のようです。
なお、正当な解約事由が大きいほど、立退料は少なくなる傾向はあります。
適正な立退料の算出には、専門的知識が必要ですので、不動産鑑定士などの専門家に相談するとよいでしょう。

(公社)兵庫県不動産鑑定士協会
神戸市中央区下山手通3-12-1トア山手プラザ807号室
078-325-1023

 借りている家が区画整理で立退きの対象となったが、借主も補償金はもらえるか。

(解説)
区画整理等の対象となっても補償金はもらえる場合が多いです。(解約に該当する正当事由のない限り、その区画整理によってどうしても退去しなければならないときは、貸主か事業者に補償金相当の補償を求めることができます。)

 使用貸借による借地の立退きを要請された場合、立退料の請求は可能か。

(解説)
使用貸借は、無償で使用・収益をさせるものです(民法第593条)。
貸主は、契約に定めた時期の到来等所定の返還時期が到来すれば、返還請求できることになっています(民法第597条)。原則として、立退料の請求はできません。但し、借主が支出した有益費用の償還請求や当事者間の話合いによる支払合意は、あり得ます。

 建物の借主に契約違反があるので解除したいが、どのようにすればよいか。

(解説)
契約違反が、貸主と借主との信頼関係を破壊するほど強いか、強くないかによって取り扱いが異なります。
契約違反が、たとえば家賃の支払いを長期間滞納したように信頼関係を破壊するといえる場合は、契約解除することができるでしょう。
こうした場合は、相当の期間(通常は1週間~2週間位)を定めて契約どおり履行するように催告します。そして、その期間内に契約違反を改めないときは、解除することができます。
しかし、未払い家賃が1~2か月分ぐらいだけの違反の場合は、信頼関係を破壊するほど強い違反とは言い難く、解除は困難です。
なお、催告や解除の通知は、配達証明付きの内容証明郵便で行ったほうが証拠となってよいでしょう。

 口約束で家を賃貸していたが、この際、契約書を取り交わしたい。どんなことに注意すればよいか。

(解説)
建物の一般的な賃貸借契約は口約束で成立します。しかし、基本的な事項が文書化されていないとトラブルが生じやすくなります。
従って、契約期間中であっても、双方の合意があれば、契約書を作成することは可能ですので、話し合って作成しておいたほうが賢明です。
その際、建物の賃貸借契約では、(1)賃貸借期間の始期及び終期、(2)家賃の額及び支払うべき時期、(3)敷金の返還額及び時期、(4)転貸の是非、(5)保証人の有無及び極度額の定めなどが問題になりがちです。

注意する点としては、

  • (1)更新のない定期借家契約を締結するか否か
  • (2)戸建住宅の場合なら、建物の改装や敷地利用などについての事前の承諾、転貸等の禁止の明確化
  • (3)マンションなどの場合は、共用部分の利用方法、他の賃借人や近隣への迷惑行為の禁止の明文化など用途の違いによって、トラブルの元凶になる恐れがある事項の明記
  • (4)更新料の支払い

など特約事項をどの程度記載するかがあります。

 建物賃貸契約書のサンプルを示してほしい。

(解説)
建物賃貸借契約で定めておくべきものとしては、(1)契約当事者(2)目的物(建物の所在及び使用する範囲)(3)契約期間(4)家賃(5)使用目的(6)特約(無催告解除など)(7)敷金の取扱いなどが一般的なものです。
なお、借地借家法では、賃借人を保護するために、一定の規定に反し賃借人に不利な特約は、無効とすることを定めています(借地借家法第30条、第37条)。

ただし、上記サンプルは、賃貸人・賃借人いずれの立場にも立たず中立的な観点から、必要最低限の内容を示したものですので、実際に契約書を作成される際は、この点ご留意ください。

 土地賃貸借契約書はどのように作成すればよいか。

(解説)
契約内容は、当事者間で自由に定められるのが原則です。
土地賃貸借契約で定めておくべきものとしては、(1)賃貸人・賃借人・対象土地の表示(2)賃貸借の目的・期間(3)賃料(4)借地条件(5)賃借権の無断譲渡・転貸の禁止(6)無断建物増改築禁止の特約(7)無催告解除の特約(8)敷金の取扱いなどが一般的なものです。
なお、借地借家法では、賃借人(借地権者)を保護するために、一定の規定に反し賃借人に不利な特約は無効とすることを定めています(借地借家法第9条、第16条、第21条)。

ただし、上記サンプルは、賃貸人・賃借人いずれの立場にも立たず中立的な観点から、必要最低限の内容を示したものですので、実際に契約書を作成される際は、この点ご留意ください。

 借りている家が売却されたら、退去する必要があるか。

(解説)
借家が売却され、建物の引渡しが行われても、借主が既に引渡しを受けていれば、賃借権を第三者に対抗できるので、賃借人として、引き続き建物を使用できます(借地借家法第31条、借家法第1条)。
新家主は、建物所有権の取得に伴い、借家契約の家主の地位を承継し、原則として、借家契約の内容も全て引き継ぐことになります。
従って、新家主から、立退きを求められたとしても、これを拒否することができます。

 借地が売却されたら、借地人はどうなるか。

(解説)
借地借家法では、借地権者(借主)が借地上に登記された建物を所有するときは、その建物の登記のあとに借地の所有権移転などの登記をした第三者に借地権を対抗することができることになっています(借地借家法第10条第1項)。
従って、上記の場合には、借主は新地主に賃借権を対抗することができます。

 借地上の建物を相続したら、契約を新たにする必要があるのか。

(解説)
借地権は、財産権の1つとして相続の対象となり、相続人に継承されますので、従前通りの契約を相続人が引き継ぐことになります(民法第896条)。
あらためて、借地契約の名義書換をしなくても、期間や賃料その他の契約条件は被相続人のままで生きています。
可能であれば、土地貸借変更合意書を作成しておく方がよいでしょう。

 借地契約期間中に建物が滅失したら、どうなるのか。

(解説)
借地契約の場合、目的物は土地であるので、地上建物が、火災・風水害等により滅失しても、借地契約が終了することはありません。
借地権者(借主)は、借地上に新たに建物を築造することができますが、それによって、当然に契約期間が延長する訳ではありません。
借地権者(借主)は、契約期間中に建物が滅失した場合において、借地権の残存期間(元々の契約の残り期間)を超えて残存すべき建物を築造したときは、その築造について借地権設定者(地主)の承諾がある場合に限って、借地権は、その承諾のあった日または建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続します(借地借家法第7条第1項)。
地主が、承諾しないときは、当初の契約の残存期間となります。ただし、地主が期間満了時に更新拒絶するには、正当事由が必要となりますので、契約を更新できる場合もあります。また、地主に正当事由があり、更新拒絶が認められた場合は、借主は、地主に再築した建物を買い取るよう請求することができます(借地借家法第13条第1項)。
なお、建物の滅失が借地契約の更新後であった場合は、地主の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物の再築を行うと、地主から契約を解約することができます(借地借家法第8条第2項)。建築の再築がやむを得ないのに地主が承諾をしなかった場合は、借主は裁判所に地主の承諾に代る許可を求めることができます(借地借家法第18条第1項)。

 借地の石垣等が危険な状態になったときは、どうすればよいか。

(解説)
石垣等の危険な状態を放置すれば、土地の使用に支障が生じるでしょうし、石垣等の崩壊等により通行人が怪我をするなど不測の事態を招くおそれがあります。
そこで、石垣等が危険な状態になったときは、地主に対し、内容証明郵便で速やかに補修をしてもらうよう要求する必要があります。
地主が、この要求に応じないときは、借地人が石垣等を補修することができます(民法第607条の2)。
石垣等の補修費用は、賃借物の保存に通常必要な費用(必要費)であるのが一般的でしょうから、この場合には、地主は必要費用の全額の償還義務を負うことになります(民法第608条)。

 借地上の建物を地主の許可なしで売却できるか。

(解説)
借地上の建物を第三者に売却すると、原則として、借地権も当該第三者に移転することになりますので、地主の承諾がいります。地主の承諾なしに借地上の建物を第三者に売却した場合、地主は、原則として、無断譲渡として、賃貸借契約を解除することができます(民法第612条)。
借地上の建物を売却するにつき、地主の承諾が得られないときは、裁判所に対し「賃貸人の承諾に代る許可」を求めることができます。また、裁判所は当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、一定の金額を地主に支払うことなどを条件に地主の承諾に代る許可を与えることができます(借地借家法第19条)。

 借地権の譲渡承諾料はどれくらいか。

(解説)
賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならないので、ケースバイケースですが、概ね借地権価格の1割前後で決められています。

 地主から増改築等の承諾が得られないときは、どのようにすればよいか。

(解説)
借地人は、契約の目的に反しない限りにおいて、借地上の建物の増改築を行ってもよいのが原則ですが、事前に地主の承諾を求めておく方がよいでしょう。
なお、契約に増改築等の禁止の特約がある場合、増改築等に関する地主の承諾を得ることが必要となります。無断で増改築を行ってしまった場合には、契約解除をされることがあります。
地主の承諾が得られないときは、借主は、裁判所に対し「増改築について、土地所有者または賃貸人の承諾に代る」許可を求めることができ、裁判所はその増改築等が土地の通常の利用上相当なものであることなど、一定の条件を満たす場合には、許可を与えることができます。当事者間の利益の衡平を図るため、必要があるときは、一定の金銭支払を命じる、地代を値上げするなど、借地条件の変更など相当の処分をすることができます(借地借家法第17条)。

 所有している空き地を建物所有目的で資材置き場等に一時使用させる場合に、注意すべき点は何か。

(解説)
借地契約関係は、本来ある程度長期に及ぶ性質を有するものであることから、借地借家法は、その長期性・継続性にかんがみ、借地権の存続期間等について厳格な規定を有し、借地人にできるだけ安定した地位を保証しています。
しかし、借地借家法第25条(一時使用目的の借地権)は、建物を所有した目的が一時的なもので、その目的の終了により建物の所有する目的も消滅する場合に、同法第3条から第8条まで(借地権の存続期間や更新等に関する規定)、第13条(建物買取請求権に関する規定)、第17条(借地条件の変更及び増改築の許可に関する規定)、第18条(借地契約更新後の建物再築の許可に関する規定)及び第22条から第24条まで(定期借地権等に関する規定)の規定は、適用しないこととしています。

地主が一時使用の借地として土地を賃貸する場合、注意すべき点は次のとおりです。

  • (1)契約書上、「一時使用のため」であることを明記しておくこと
  • (2)期間を短期にすること
  • (3)具体的に近い将来の土地利用計画があることを借地人に認識させ、また認識したことを明記させること
  • (4)期間中の土地の利用について、取壊しの容易なバラック等の仮設建物の建設に限定しておくこと
  • (5)通常の賃料以外に権利金あるいは敷金の名目で金銭を受け取らないこと

一時使用の借地か否かを判断する要素の例

土地賃貸借の目的・動機

(判断基準)

  • 借地人が短期間に投下資本を回収できるかどうか
  • 地主の近い将来、建物を建設するまでの短期的賃貸かどうか
    (土地の明渡請求があれば、速やかに土地の明渡しをする旨の誓約書を差し入れる)
地上建物の種類・構造

(判断基準)

  • バラックに限定して建築が許された場合など、借地上に建てられた建物の種類・構造
契約の表題、内容・条項

(判断基準)

  • 契約の表題や内容・契約文言がいかなるものであるか
  • 契約上、賃貸借期間として借地借家法の定めより、相当短いものが定められている
  • 契約書に「土地一時使用賃貸借契約書」との表題が付されている(但し、契約文言は決定的なものでなく、これを裏付ける客観的な状況が必要。)
権利金、敷金の授受の有無

(判断基準)

  • 土地所有者が、権利金あるいは敷金の名目で通常の賃料以外の金銭を、借地人から受領していたかどうか
    (一時使用目的以外の借地権を設定する場合には、土地所有権は借地人から地代以外に権利金あるいは敷金を受け取ることが通常である。)

 「定期借地権」とは、どのような制度か。

(解説)
「定期借地制度」とは、更新がなく、定められた契約期間で確定的に借地関係が終了する制度です。
従来、よく議論された「正当事由」の有無にかかわらず、確実に土地が返還される制度です。

「定期借地権」の種類

種類 利用目的 存続期間 手続、借地関係の終了等
一般定期借地権
(借地借家法第22条)
建物の所有 50年以上
  • 契約は公正証書等書面で行う。
  • 「契約を更新しない」「建物築造による契約期間の延長をしない」「建物の買取請求をしない」という3つの特約を定める。
  • 借地期間終了に伴い、借地人は建物を取り壊して土地を返還する。
建物譲渡特約付借地権
(借地借家法第24条)
建物の所有 30年以上
  • 30年以上を経過した時点で、土地所有者が建物を相当の対価で買い取る旨を定める(建物を譲渡することで借地権は消滅)。
  • 借地権の消滅後、借地人または建物の賃借人が建物の使用の継続を請求すれば、建物につき期間の定めのない賃借権がされたものとみなす。
事業用借地権
(借地借家法第23条)
事業用の建物の所有のために限る
(住居用には利用できない)
10年以上50年未満
  • 契約は公正証書により行う。
  • 借地期間終了に伴い、借地人は建物を取り壊して土地を返還する。

 定期借家制度とはどのようなものか。これまでの借家契約を期間満了を機に定期借家契約に切替えることができるのか。

(解説)
定期借家契約においては、契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に借家契約が終了します。従って、家主、借家人、双方で再契約の合意ができなければ、借家人は、引き続きその建物を賃借することはできなくなります(従来型の借家契約では、正当事由がない限り家主からの更新拒否はできず、自動的に契約が更新されることになっています。)。
契約を結ぶためには、①必ず公正証書などにより契約書を作成し、②家主は、借家人に「この賃貸借は更新がなく、期間満了により終了する」ことを、契約書とは別に書面を交付して説明しなければならないこととなっています。
定期借家契約の期間が1年以上である場合は、通知期間内(期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間)に、家主は借家人に終了の通知をする必要があります(借地借家法第38条)。
また、これまでの借家契約を期間満了を機に定期借家契約に切り換えることについては、居住用の建物について、2000年3月1日より前に借家契約を締結している借家人が、その建物を引き続き賃貸借する場合に定期借家契約を締結することは、「当分の間」できないことになっています(良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法附則第3条)。
なお、居住用以外の事業用建物については、従前に結ばれた借家契約を借家人、家主、双方が合意して終了させ、同一の建物について定期借家契約を結ぶことはできます。

 借地借家法(平成4年8月施行)は、借地法及び借家法とどこがどのように変更になったのか。

(解説)
主な変更点は次のとおりです。

1.正当事由がなければ、契約が更新され続けていく画一的な制度に、一定の範囲で例外を認めたこと

  • (1)新規定の適用を受けないようにする定期借地権の設定(借地借家法第22条、第23条、第24条)
  • (2)建物に取り壊し予定がある場合に、決められた期限で終了する借家契約できるようにしたこと(同法第39条)。なお、その後の借地借家法の改正(平成12年3月1日施行)により、定期借家制度が導入された(同法第38条)。

2.更新があるタイプの普通借地権による借地関係や借家関係についても、当事者の関係のあり方を合理的に見直し改善策を設けたこと

(借地関係)

  • (1)借地権の存続期間を当初は30年とし、更新後は第1回目は20年、以後は10年とすること(同法第3条、第4条)
  • (2)建物朽廃によって借地権が当然に消滅することとする制度を廃止(同法第10条)
  • (3)更新後の存続期間中に建物が滅失した場合には、その時点で以後の権利関係を調整することができるようにしたこと(同法第8条)
  • (4)正当事由の内容について、判断の柱となる事項を明らかにしようとしたこと(同法6条)

(借家関係)

  • 1:正当事由の内容について、判断の柱となる事項を明らかにしようとしたこと(同法28条)

3.存続の保障の仕組み以外のところで、制度として合理的な仕組みを新設し、或いは、従来の制度を合理的な範囲に拡張したこと

(借地関係)

  • (1)建物が滅失した場合にも、借地人は掲示をすることにより、建物の再築に必要な一定期間だけは、土地の権利が第三者に移転しても建物が存在し続けるのと同様の立場のまま、第三者に自己の借地権を主張することができるようにしたこと(同法第10条第2項)
  • (2)自己借地権の設定、すなわち借地権を設定しようとする者が他人とともにであれば自己を借地人として借地権を設定することができるようにしたこと(同法第15条)
  • (3)事情の変化に応じて、裁判所に建物に関する借地条件を変更するよう求めることができる範囲を広げたこと(同法第17条)

(借家関係)

  • (1)借家人が家主の承諾を得て備え付けた畳などの造作を家主が買い取るべきとする造作買取請求権について、当事者がそうしないとする合意することも認めたこと(同法第33条、第37条)
  • (2)借地権が期間満了により消滅する場合に、借地上に立っている建物の借家人がその期間の満了を知らなかったときは、その借家人を保護する措置をとることとしたこと(同法第35条)

4.手続的な整備を図り、より簡易迅速な紛争の解決を図ったこと

  • (1)地代・家賃に関する紛争の解決について調停制度の利用を図ったこと(民事調停法24条の2)