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最終更新日:2024年6月3日
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この解説は、2019年9月、兵庫県弁護士会の監修を受け作成したものです。
相談が多いテーマの一般的な質問とそれへの回答の一例を示したものです。具体的な事情等によっては、この限りではありません。
(解説)
金銭貸借は、民法第587条及び第587条の2に規定される消費貸借契約に該当します。
書面で契約しなくても、金銭の受取りにより口頭だけでも契約は成立しますが、大切なお金の貸借であり、後日の万一の紛争に備えて金銭消費貸借契約書や借用書を作成しておくことが大事です。
記載事項としては、1金額、2返済期日、3返済方法、4利息、5遅延損害金などの取決めは最低限記載し、双方が署名・押印しておく必要があります。場合によっては、公正証書により契約書を作成することも必要です。
(解説)
書式例は、一般的なものを掲載していますので、個々の具体的なケースについては、市民相談室にご相談ください。
(解説)
公証人に依頼して、公正証書による契約書にすることも可能です。一定の金額の支払いを目的とする場合、公正証書の書中に「違約の場合には執行を受けても、異議はない」との文言(認諾条項)を入れることによって、それ自体強制執行をなしうる効力をもたすこともでき(民事執行法第22条第5号)、貸主にとって、借主の違約の場合には裁判に訴えて判決をもらう手続を省くことができることになります。
公正証書の作成には、貸借金額に応じた手数料が必要です。詳しくは公証役場にご確認ください。
神戸公証センター
神戸市中央区明石町44番地神戸御幸ビル5階
078-391-1180
(解説)
令和2年4月1日以降に契約が成立した金銭貸借の消滅時効は、5年(民法第166条第1項第1号)で時効が成立します(※)。また、時効が成立しても、債務者の方から、援用の意思表示がなければ時効の効力は生じませんし、時効成立後の時効利益の放棄も自由です。
金銭貸借の消滅時効の起算点は支払期日になります。ただし、支払いを行ったり債務を認めたりすると時効が更新されますので、最後の支払いや最後に債務を認めたときから時効の期間を計算することが多いです。
なお、令和2年3月31日以前に契約が成立した金銭貸借の消滅時効は、従来どおり民事については10年(旧民法第167条第1項)、商事については原則5年(商法第522条)で時効が成立します。
法律上は権利行使できることを知ったときから5年、権利行使できるときから10年で消滅時効が完成しますが、金銭貸借の場合は権利行使できることを知っているのが通常ですので、通常は5年で消滅時効が完成します。
(解説)
時効になった借金の請求があっても、債務者が時効だから支払いませんと主張(「時効の援用」という。)をすれば、その請求を拒否することができます。
時効完成後、債権者から請求があり、時効を援用したい場合、その旨、内容証明郵便で回答をしてください。
(解説)
民事の金銭貸借においては、利息の取決めをせず無利息にすることも自由ですが、無利息はごく親しい間柄の人に限られ、一般的には利息を取ることになります。
利息の取り決めがない場合でも、返済期限を過ぎて請求すれば、それ以後は、返済が遅れたことによる債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率による遅延損害金が請求できます(民法第419条、404条)。
民事・商事とも利率については、刑事罰を伴う出資法と利息約束が無効になる利息制限法の規制に注意が必要です。
具体的には、利息制限法の制限利息は、次のように定められています。
(解説)
遅延損害金は、債務者が契約上の金銭債務を弁済期限に支払わなかったとき、不履行の翌日から完済までの間、債務者が遅延の責任を負った最初の時点における法定利率の損害金を請求されます(民法第419条第1項)。
なお、利息制限法の範囲内で法定利率よりも損害金を高く定めておくことも可能です。
契約にあたり債務不履行時の損害賠償金を予約しているときは、この損害金は、制限利息の1.46倍までは有効(それを超過する部分は無効)として保護されますが、予約を欠くときは、制限利息の額と同額に減額されます(利息制限法第4条第1項)。
(解説)
「期限の利益」とは、期限が到来するまでの間、法律行為の効力の発生、消滅または債務の履行が猶予されることによって、当事者が受ける利益をいいます。
期限の利益については、民法第136条に定めがあります。
例えば、1:代金支払いについての期限は、それが到来するまで支払わなくてもよいから買主にとって利益であるし、2:利息付きでお金を貸した場合は、期限までは返さなくてよいという点では借主の利益となり、一方、期限までの利息をとることができる点では貸主の利益となります。
期限の利益を失う場合は、民法第137条に、1:債権者の担保権を債務者が侵害したとき、2:債務者が担保を提供する義務を負っているのに、それを履行しないとき等となっています。
金銭貸借契約では、割賦払いの債務者が弁済を怠った場合、債務者は「期限の利益」を喪失するという約款が付けられることが、多くありますが、この種の約款には、その事実が生ずれば、債権者は「期限の利益」を失わせること、つまり、割賦払いを認めないことが、原則として有効とされています。
(解説)
債務者が約束の期限までに債務を履行しない場合には、後日に争いが起きた場合に備え、内容証明郵便(配達証明付き)で催告するのがよいと思われます。
内容証明等で催告しても履行されない場合には、法的手続を行い、強制執行によらざるを得ないことになります。
法的手続としては、簡易裁判所に対する支払督促手続、調停の申立て、少額訴訟手続(訴額60万円以下)のほか、地方裁判所に対する訴訟手続があります。ただ、これらの手続を取るには、費用や時間がかかりますし、債務者に支払い能力がなければ無益なことにもなりかねないことになります。
なお、返済期限を定めていなかった場合は、相当な期限を定めて支払いを催告する必要があります(民法第591条)。債務者としては、この履行の催告を受けたときから遅滞の責を負うことになります(民法第412条第3項)。
(解説)
通常の場合、貸したお金の返済請求については、強制執行力のある債務名義を訴訟による確定判決で得なければなりません。
しかし、誰がみても容易に債権の存在が認められる場合は、訴訟に代って簡易迅速な支払督促の申立てが、金額の多い少ないにかかわりなく、簡易裁判所に行うことができます(民事訴訟法第382条以下)。
申立て先は、貸した相手の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官です。申立書を受理した簡易裁判所書記官は、書類を審査した上で、支払督促を発付します。支払督促を受けた(1回目)債務者が、2週間以内に督促異議の申立てをしないときは債権者の申立てにより仮執行の宣言を記載した支払督促が債務者に送付(2回目)されます。
この仮執行宣言付支払督促を受領した債務者が2週間以内に督促異議の申立てをしない場合、お金を貸した人(債権者)は、確定判決と同じ債務名義を得たことになり、相手方が支払督促に従わない場合は、強制執行の手続(差押えなど)を行うことができます。
ただし、相手方の債務者が、支払督促について、異議を申立てたときは、当然に通常の訴訟手続に移行することとなります。
また、貸したお金が60万円以下の場合は、少額訴訟という速やかに解決するための手続があります(民事訴訟法第368条以下)。定型の訴状用紙や答弁書用紙が、簡易裁判所に備え付けられており、誰にでも見本をみながら簡単に作成できます。裁判所に支払う手数料も10万円当たり1,000円と比較的安く済みます。
この定型訴状を作成して、最寄りの簡易裁判所に提出すると、呼出期日が示され、原則1回の審理で判決が言渡されます。この場合、証拠書類や証人の準備は1回限りでできることが必要です。
また、判決以外に話し合いによる和解という解決の方法も、簡易裁判所で斡旋する場合があります。
この少額訴訟手続については、弁護士のほか司法書士に依頼することもできます。
(解説)
お金を借りた人が、借りたことを認めなければ、貸した人が、お金を貸したことを立証しなければなりません。
具体的には、1:お金を渡したこと、2:それを返す約束をしたことの2点を立証しなければなりません。
(解説)
市町村の役所の窓口に借用書など、お金を貸した相手(債務者)の住所・氏名が記載され、債権・債務関係が判る書類(借用書など)を持参し、住民票の請求をすれば転出先が判る場合があります。
相手の居場所が判れば、話合いによる一般的な取立て、法的な支払督促、訴訟等による取立てとなります。
住民票を移転しないまま行方不明になったときは、近所の人や知りえている親戚、会社関係の者に尋ねるなどの調査をします。それでも債務者が見つからない場合は、公示送達により、担保権の実行も、仮差押え、訴訟提起も可能です(民事訴訟法第110条以下)。
なお、連帯保証人がいる場合には、連帯保証人に対し、返済を求めることができます。
(解説)
返済をより確実にするため、人的担保として保証人、通例では連帯保証人を立ててもらうことが可能です。
この場合には、必ず契約書に署名押印させ、保証の趣旨を明確に表示しておくことが法律で必要となっています(民法第446条第2項)。
特に、事業のための貸金等についての保証契約や根保証契約は、その貸金等の契約の前の1か月に、保証債務を履行する意思を表示する公正証書を作成することが法律で必要となっています(民法第465条の6)。
また、物的担保として動産については質権、不動産については抵当権を設定するなどの条項を入れることも可能ですし、場合によっては、別途担保権設定契約を交わすことも可能です。
(解説)
保証人は、借主(主債務者)がその債務を履行しない場合には、借主に代わってその履行の責任を負います(民法第446条)。
特約がなければ、借主の負担する元本はもちろん、その利息や損害賠償などの付随的債務についても支払う責任を負います(民法第447条第1項)。
(解説)
保証人は、主たる債務者が、その債務を履行しない場合にのみ、債権者に対して債務の履行責任を負います(民法第446条)。この場合、債権者が保証人に債務の履行責任を請求したとき、保証人は、まず主債務者に催告をするよう請求することができます(民法第452条:催告の抗弁権)。
また、債権者が催告を行った後であっても、保証人は、主たる債務者に弁済の資力がある等を証明したときは、まず主たる債務者の財産に強制執行の手続をなすよう請求することができます(民法第453条:検索の抗弁権)。
一方、連帯保証人の場合は、催告の抗弁権や検索の抗弁権がありませんので、主たる債務者が債務を履行しない場合、債権者から債務の履行を請求されれば、弁済しなくてはならないことになります(民法第454条)。
契約書に連帯の記載がない場合であっても、契約内容から連帯保証となる場合や、商法の規定によって連帯保証となる場合があります。
(解説)
連帯保証人や保証人は、借主(主たる債務者)とは別の債務を負担していますので、免責されません。従って、債権者から請求があれば返済する必要があります。
また、連帯保証人や保証人は、借主に対する関係では、他人の債務を弁済するという実質をもつため、貸主に弁済した場合は、借主から返還してもらう権利(求償権)を取得します。
しかし、借主が求償権を含めた債務について破産を申立て、免責決定を受けた場合は、求償はできません。
(解説)
相続人は、死亡した人(被相続人)が残した借金や債務などのいわゆるマイナスの遺産についても受け継ぐことになります。保証債務も通常の債務と同様、相続の対象となり、相続人が連帯保証人の地位を受け継ぐことになります。
そこで、民法第915条以下では「相続放棄」や「限定承認」の制度を設けて、相続人を保護しています。
(解説)
多重債務を整理する方法について、裁判所では3つの手続があります。
1:特定調停
債権者との話合いにより、今後の支払い方法を見直してもらう手続です。
まず、債務者の負債の残高を債権者の協力を得て確定させます。利息制限法による低い金利に基づいて、これまでの取引を再計算(金利の引直し)しますので、現在、請求されている金額よりも少なくなる可能性があります。
債務者には、月々の返済能力をもとに、再計算後の残高を3~4年で支払い切る計画を立ててもらい、調停委員を介して話し合いにより債権者に支払い計画を了承してもらう手続です。
2:個人再生
債務者の負債の一定割合もしくは一定額を3年間(最長5年間)で支払い、残った負債は免除してもらう手続です。
住宅ローンは、別枠で支払い続けることにより、自宅を手放すことなくこの制度を利用できる点にもメリットがあります。
手続が複雑なので、弁護士等に依頼することが賢明です。
3:自己破産
原則として、債務者の所有する高価な財産(不動産、保険、退職金等)を現金に換えて、それを債権者に支払い、残った負債は免責という手続で免除してもらう手続です。
裁判所による手続のほかに、任意整理の方法があります。
これは、事実上支払不能の状態にある債務者が、各債権者と個別または一括示談和解を行い、債務を清算するものです。
任意整理では、債務者の確定と債務弁済計画の策定、債権者による返済計画案の同意書確保、弁済実行という流れで進められます。もれなく債権者の承認を取りつけることが何より大切です。弁護士に委任することが賢明です。