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最終更新日:2023年9月13日
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1995年1月17日午前5時46分に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は、神戸市全域にわたり大きな被害をもたらし、神戸港をはじめ、鉄道、道路、ライフラインなどの基幹的な都市インフラ、神戸経済を支える基幹産業や地域に根ざした産業、商店街なども甚大な被害を受けた。そして、多くの尊い命と、市民の生活基盤である住宅と先人が築き上げてきたまちの多くを失い、神戸は戦災以後、最大の危機に直面している。
しかし、このような厳しい状況から一日も早く立ち上がり、失われたすまいとまちを取り戻し、市民生活の安定を早急に図らなければならない。そして、この震災の教訓を生かし、災害による被害を最小限に抑える、災害に強いすまい・まちづくりをすすめていく必要がある。
このため、市、事業者、市民が一丸となってすまいとまちの復旧・復興にあたらなければならない。この計画は、このたびの震災により、未曾有の被害を被った神戸のすまいとまちを早急に復旧・復興するとともに、きたるべき21世紀にあっても誇ることのできる災害に強い活力あるすまい・まちづくりをすすめることを目的とし、住宅供給の目標量とこれを推進するための主要な施策について定めるものである。
甚大な被害を被った市街地のうち、建築物の集中的倒壊及び面的焼失を被った地域等を中心に、まちづくりと連携した住宅整備を総合的にすすめる。
この計画は「神戸市震災復興緊急整備条例」(1995年2月16日神戸市条例第43号。以下「緊急整備条例」とする。)第4条に定める市長の責務である「市街地及び住宅の復興に関する計画」であり、神戸市全体の震災復興について定める「神戸市復興計画」の住宅部門に関することを定めた計画である。また、この計画で定める内容については、1996年度よりはじまる「(仮称)第7期神戸市住宅5か年計画」にも反映させていく。
被災したすまいととまちの復旧・復興は緊急を要することから、計画期間を震災後おおむね3年とし、この計画の目標年次を1997年度とする。
震災により多大な被害を被った市街地と住宅の緊急整備、災害に強い活力ある市街地の形成及び良好な住宅の供給をすすめ、「住みたい街・住み続けたい街・神戸」の再生と「魅力ある都市集住」を実現するため、基本目標を次のとおり定める。
このたびの震災で生活基盤である住宅の多くが失われ、不自由な生活を余儀なくされている人や被災により一時的に神戸の街を離れた人々も多い。これら被災市民の生活基盤であるすまいとまちの整備をすすめ、住み慣れた街・神戸で再び安定した生活を早期に再建できるようにする。
震災後の対応は、被災したすまいとまちの早急な復旧を図るとともに、この震災を単なる災いで終わらせず、むしろこれを教訓に、物心ともに傷ついた市民に活力と夢を与える、きたるべき21世紀を見据えた復興のすまい・まちづくりを行う。
すまいとまちの緊急整備を図るうえでの基本目標の実現に向けて、次の方針により住宅施策を展開する。
緊急整備条例に定める復興の理念に基づき、市民・事業者・市が一丸となって、各々がまちづくりの主人公であるとの自覚と責任のもとで、協働によるすまい・まちづくりに取り組む。
失われた大量の住宅ストックを早期に回復するため、公民を問わず住宅供給事業主体の総力を結集して、市域全体で良好な住宅供給を進める。
甚大な被害を被った市街地のうち、建築物の集中的倒壊及び面的焼失を被った地域等を中心に、まちづくりと連携した住宅整備を総合的にすすめる。
自力での住宅確保が困難な高齢者・障害者等への住宅供給を重点的に行うとともに、自助自立を可能とする総合的な施策を展開する。
災害による被害を最小限に抑える、災害に強いすまい・まちづくりをすすめるとともに、地域コミュニティを考慮し、日常生活における生活者の安全性・利便性を高め、神戸のまちの良さや美しさを生かした神戸らしいすまい・まちづくりをソフト・ハード両面からすすめる。
失われた大量の住宅ストックを早急に回復するため、計画期間中の供給目標戸数を82,000戸とする。このうち、既着工住宅等の供給見込み戸数を10,000戸とし、新規住宅の建設目標戸数を72,000戸とする。
新規建設72,000戸のうち、持家・借家の内訳は、持家29,000戸(約40%)、借家43,000戸(約60%)とする。
住宅種別 | 建設戸数 | 備考 |
---|---|---|
公営住宅※1 | 10,000(13.9%) | |
神戸市 | 7,500(10.4%) | 再建分1,500戸を含む。 |
兵庫県 | 2,500(3.5%) | |
特定優良賃貸住宅 | 10,500(14.6%) | |
神戸市 | 7,500(10.4%) | |
兵庫県 | 3,000(4.2%) | |
再開発系住宅※2 | 4,000(5.5%) | 改良住宅の再建分1,000戸を含む。 |
公団・公社住宅 | 15,900(22.1%) | |
公団住宅 | 12,900(17.9%) | |
神戸市公社 | 2,000(2.8%) | |
兵庫県公社 | 1,000(1.4%) | |
民間住宅※3 [うち公的助成]※4 |
31,600(43.9%) [うち4,600(6.4%)] |
|
合計 | 72,000(100.0%) |
緊急整備条例に基づく「震災復興促進区域」内で建築行為を行う建築主に対しては、同条例に基づき、建築の防災に関するアドバイスや震災復興事業に係る補助制度等の情報提供を行い、地域のまちづくりと連携した良好なすまいづくりを推進する。
S型 | M型 | L型 | |
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住戸専用面積 | 40平方メートル又は 50平方メートル |
60平方メートル | 70平方メートル |
震災により住宅に困窮する中間所得層等を対象に、民間土地所有者が建設する優良な賃貸住宅を、住宅供給公社、農業協同組合、民間指定管理法人が借り上げる等して、災害復興特定優良賃貸住宅として供給する。
早期大量供給を図るため、建設要件の緩和等を図る。
おもに震災により住宅に困窮する中間所得層を対象に、住宅供給計画の前倒しを図り、優良な賃貸住宅、分譲住宅の早期大量供給を図る。
被災地の復興に際し、専門的・技術的支援のできる人材派遣についての市民からの要請に迅速かつ十分に対応できるよう、「まちづくり条例」に基づくコンサルタント派遣等の制度の拡充を図り、まちづくりや共同・協調建替等に関する全国の専門家の人材登録、地域派遣を行う「こうべすまい・まちづくり人材センター」を活用し、市民やまちづくり協議会からの要請に応じて、専門家の派遣を行う。
被災者の住宅ニーズに幅広く応えると同時に、神戸らしい国際性豊かな住文化の再生と創造についての情報発信を目的とする「インターナショナル・ハウジングメッセ」を、海外政府系団体、海外住宅住設機器・部材メーカー、輸入住宅商社等の協力により開設し、輸入住宅部材の展示を行う。
専門家派遣等のすまい・まちづくり活動への支援を行う「(仮称)すまい・まちづくりファンド」を設立する。
すまい・まちづくりに関するコンペを実施し、市民にまちづくりを考えるきっかけとしてもらう。
所有者等の合意によりルールが定められた街区に対し、建ぺい率、容積率、道路斜線等の合理化を行う「神戸市インナーシティ長屋街区改善誘導制度」を活用し、良好な建替を支援する。
市街地・住宅の復興にあたり、地域の特性を生かしたすまい・まちづくりをすすめるためのビジョンとなる地域住宅像を、HOPE計画により位置づけるとともに、「いきいき下町推進協議会」活動等の積極的展開を図る。
震災により住宅を失ったり、補修を必要とする被災者に対して、住宅の建替、購入、補修等を支援するため、「神戸市災害復興住宅特別融資制度」による特別融資を行う。
住宅復興に係る税、法律関係、建築技術、宅地防災、まちづくり、マンション等に関する各種相談や情報提供を行うため、兵庫県と協力し、市内4か所に総合住宅相談所を設置する。
神戸市と兵庫県により設立した「阪神・淡路大震災復興基金」を活用し、被災者の住宅再建のため、住宅金融公庫融資等に対する利子補給等の支援を行う。(災害復興(分譲)住宅購入支援事業、被災者住宅再建支援事業、民間住宅共同化支援利子補給、被災マンション建替支援利子補給、県・市町単独住宅復興融資利子補給、住宅債務償還特別対策、災害復興準公営住宅推進事業補助、宅地防災工事助成等)
公営住宅等の公的賃貸住宅の募集、入居者選定については、兵庫県、住宅・都市整備公団、住宅供給公社と協力して一元的に行い、その中でコミュニティバランスに配慮しつつ、被災した高齢者、障害者、母子世帯等で住宅に対する困窮度が高い世帯が優先的に入居できるようにする。
震災により多大な被害を被った震災復興促進区域内で、被災木造賃貸住宅に居住していた高齢者等が住み慣れた地域で適正な住居費負担で住宅を確保できるように、特定借上・買取賃貸住宅制度、特定目的借上公共賃貸住宅制度、住宅市街地総合整備事業等による従前居住者用住宅の活用を図るとともに、家賃の軽減策についての検討を行う。
災害公営住宅の建設にあたっては、ハード面の整備のみならず、一定の福祉サービスが受けられるシルバーハウジング・プロジェクトによる住宅を積極的に供給するほか、一般の災害公営住宅等においても、福祉サービス等に利用できる多目的の集会所等の整備を進める。
住宅供給に際し、福祉施設、医療施設等との連携を図り、高齢者等が安心して居住できるよう、支援するしくみづくりを検討する。
様々な年齢、家族構成等の人々が住まい、地域のコミュニティバランスがとれるよう、すまい・まちづくりを行う。
震災による教訓を生かし、自立型エネルギー供給システムの導入など、災害に強い住まいづくりを進めるとともに、省エネルギーの実施や、自然素材の利用、積極的な緑化等、環境に対する負荷の軽減や景観に配慮したすまい・まちづくりを推進する。
高齢者等が快適で安心して日常生活を送れることができ、あわせて災害時には避難空間となる広場や備蓄倉庫、貯水槽等を有する自立性の高い「快適で安全な復興住宅街区」の整備を行う。
復興住宅街区をはじめとする建築敷地内のオープンスペースの活用により、快適な遊歩道空間を創出するとともに、災害に強いまちづくりを進める。